社会保険労務士業界の課題⑤:特定社会保険労務士制度の未成熟

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社会保険労務士業界の課題⑤:特定社会保険労務士制度の未成熟

前のページで取り上げた「社会保険労務士法人」と同様に、規制緩和・改革の流れの中で社会保険労務士法が改正されて、比較的最近になって誕生した制度に「特定社会保険労務士」制度があります。

「特定社会保険労務士」制度
設立数が伸び悩む「社会保険労務士法人」とは対照的に、「特定社会保険労務士」の数は着実に増えていて、現在は1万人を超えるとも言われています。社会保険労務士全体の登録者数が4万人前後であることを考えれば、その4分の1にあたる1万人という人数は十分に多いと言えるでしょう。

それでは「特定社会保険労務士」は制度として大成功しているかと言えば、一概にはそうとは言えない部分もあります。というのも、確かに「特定社会保険労務士」の数自体は着実に増えているのですが、実際に紛争解決手続き代理業務に従事している人はそれほど多くありません

その理由としてはいくつか考えられますが、紛争解決手続き業務における「あっせん」は労働者主導で行われることが多いにも関わらず、特定社会保険労務士の側がそれに慣れていないということもあるかと思います。
通常の社会保険労務士の仕事は、労働者ではなく経営者の側に立つことが一般的であるため、労働者側の代理人になることに対して躊躇してしまう特定社会保険労務士が多いようです。

もうひとつは、「あっせん」や「調停」というのは、経営者と労働者の双方がそろって交渉のテーブルについて初めて成り立つものですが、主に経営者の側がそれを拒み、紛争解決手続き業務がそこでストップしてしまうケースも少なくありません。

特定社会保険労務士による紛争解決手続き代理業務が社会的意義の高い業務であることに変わりはありませんが、しかし環境が十分に整っているとは言い難い現況においては、それに過度に依存し過ぎてしまうのもリスクが高いと言えます。
これから社会保険労務士、さらには特定社会保険労務士になることを考えている人は、そのあたりもしっかりと念頭に置いておく必要があるでしょう。



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