社会保険労務士業界の課題②:専門人材の不足

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社会保険労務士業界の課題②:専門人材の不足

社会保険労務士というのはそもそも人事・労務管理の専門家であるわけですから、業界の課題として「専門人材の不足」を挙げていることに対して違和感を感じる方もおられるかもしれません。

専門人材の不足
確かに、社会保険労務士というのは人事・労務管理の専門家ではあるのですが、それは、本来この資格に求められている役割の一側面に過ぎません。たとえば、社会保険労務士は本来ならば「年金の専門家」でもあるべきなのですが、年金相談に幅広く対応できる専門人材が不足しているのが現状です。

年金相談に幅広く対応するためには、国民年金、さらにはサラリーマンを対象にした厚生年金だけでなく、公務員や私学教員を対象にした共済年金などに関する知識も必要になってくるわけですが、皆さんもご存知のとおり、社会保険労務士試験の試験科目になっているのは国民年金法と厚生年金保険法のみ。すなわち、社会保険労務士試験に合格した段階では共済年金などに関する知識に乏しく、年金相談の即戦力として活躍することができないのです。

また、本来は得意とするはずの「人事・労務管理」についても十分とは言えない現状にあります。

一昔前までは、人事・労務管理と言えば人事部や総務部といった現場のマターで、社会保険労務士が提供する業務もそこだけで完結していました。
しかし今は違います。人事・労務管理は、経営上の重要な戦略のひとつになり、それに伴って社会保険労務士にも経営的な視点が求められるようになっています

しかし残念なことに、社会保険労務士の多くは企業経営、もっと言えば企業勤務の経験もないために、経営的な視点を持ったコンサルティングを不得意としており、ここにミスマッチが生じてしまっているのです。

見方を変えるならば、会社勤めの経験をせずにいきなり独立・開業した社会保険労務士よりも、今現在会社勤めをしていて、これから社会保険労務士への転職を目指している皆さんの方が、クライアント企業のニーズにより即したサービスを提供できる可能性が高いとも言えるでしょう。



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